相談者プロフィール
・会計事務所に入ったものの1年目ですでに転職を考え始めている
・経験1年程度での転職は大丈夫なのか心配
今回のお悩みはこちらになります。

会計事務所に入社して1年。毎日の仕事がつらくてもう辞めたい…。でも、まだ1年しか経ってないのに転職して大丈夫かな…、自分は無能なんじゃないか…。
会計事務所に入社して1年。毎日の仕事がつらくて、「もう辞めたい」と考えていませんか?「まだ1年しか経ってないのに、転職して大丈夫かな…」「自分は無能なんじゃないか」と、一人で悩みを抱え込んでいる方も多いでしょう。
このようなお悩みに対して
1年で辞めたいと思うのはなぜ?よくある理由とあなたの悩み



結論から言うと、会計事務所を1年で辞めることは、決して珍しいことではありませんし、転職で不利になるとも限りません。
なぜ会計事務所の1年目がつらいのか、1年で辞めることのメリット・デメリット、そして失敗しないための具体的な転職方法まで、あなたの悩みを解決するヒントをすべてお伝えします。
会計事務所で働く多くの人が、特に1年目に「辞めたい」と感じるのには、明確な理由があります。一人で悩んでいるかもしれませんが、それは決してあなただけの問題ではありません。
会計事務所の仕事がつらいと感じる5つの理由
会計事務所の仕事は、精神的・肉体的なストレスにつながりやすい側面があります。主な理由として挙げられるのは、以下のような点です。
まず、顧客対応による精神的疲労です。会計事務所の顧客は企業の経営者が多く、中には高圧的な態度を取る人や、無理な要求をしてくる人もいます。新人のうちにこのような顧客を担当すると、電話で質問を浴びせられてパニックになったり、うまく答えられずに自信を失ったりすることがあります。
次に、閉鎖的な人間関係です。一般的な事業会社と比べて、会計事務所は従業員数が少ない傾向にあります。そのため、合わない人がいても異動ができず、小さな社会の中でストレスを感じ続けてしまいがちです。特に、所長やベテランスタッフとの相性は、仕事の進め方を大きく左右します。
また、長時間労働も大きな要因です。会計事務所には繁忙期(12月〜5月頃)と閑散期があり、繁忙期には残業や休日出勤が当たり前という事務所も少なくありません。確定申告や決算の期限に追われる日々は、心身ともに疲労が蓄積し、プライベートな時間や勉強時間を確保するのが難しくなります。
さらに、教育体制の不備も問題です。専門性が高い仕事であるにもかかわらず、放置されて自分で学ぶことを強いられる事務所も多く存在します。質問しにくい雰囲気だったり、先輩が忙しすぎて聞けなかったりすることで、自分が成長している実感が得られず、不安や孤独感を抱えてしまいます。
最後に、仕事と給料のバランスへの不満です。入社時には納得していても、激務を経験したり、成果が正当に評価されていないと感じたりすると、「この給料では割に合わない」と感じるようになります。特に、未経験者の場合、スタートラインの基本給が低く設定されていることも少なくありません。


あなたは無能じゃない?「能力不足」と感じてしまう本当の原因
会計事務所で「ついていけない」「能力不足だ」と感じるのは、あなたの能力が低いからではありません。これは、知識と経験の不足、そして不十分な教育体制が原因である場合がほとんどです。
会計事務所の仕事は、専門性が高く、かつ正確性が求められます。入社1年目では、まだ業務全体の流れを把握できていないのが当然です。質問攻めに遭って頭が真っ白になるのも、間違ったことを言ってはいけないというプレッシャーと、そもそも知識が不足しているからに他なりません。
この「能力不足」の感覚は、仕事が丸投げされたり、質問できる相手がいなかったりする環境でより強くなります。自分で調べる努力ももちろん大切ですが、適切な指導者がいてこそ、効率的にスキルを身につけ、自信をつけられるものです。
辞める前に試したい!1年目の悩みを乗り越える対処法
「辞めたい」という気持ちが募っていても、すぐに辞める決断をする前に、いくつか試してみてほしいことがあります。
まず、悩みを一人で抱え込まないことです。信頼できる上司や同僚、あるいは職場の外にいる同じ業界の友人など、誰かに相談してみましょう。話すだけでも気持ちが楽になりますし、意外と大きな悩みではなかったと気づくこともあります。
次に、タスク管理を徹底することです。会計事務所の仕事は複数のタスクを同時に抱えるため、優先順位をつけて効率的に進めることが不可欠です。いったん別のタスクを進めてから、改めて戻るなど、メリハリをつけることで、時間ばかりが過ぎていく感覚を減らせます。
最後に、メンタルコントロールを意識することです。「できて当たり前」の世界では褒められることが少なく、精神的に疲弊しやすい傾向があります。同僚とお互いを褒め合う文化を築いたり、自分へのご褒美を用意したりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけることも重要です。


「会計事務所を1年で辞める」は転職で不利になる?



「1年で辞めるなんて、次の転職で不利になるのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。しかし、会計事務所業界では、短期離職はそれほど珍しいことではありません。
短期離職は本当に問題なのか?転職市場のリアル
厚生労働省の統計によると、一般企業の離職率は14%程度ですが、会計事務所においては、特に小規模な事務所では1年以内の離職率が30%を超えるケースも報告されています。これは、税理士として独立を目指す人や、より良い条件を求めて転職する人が多いためです。
この業界では、一度や二度の短期離職はさほど問題視されない傾向にあります。それよりも、実務経験がどの程度あるか、何ができるのか、というスキルが重要視されます。
会計事務所から1年で転職する人の割合は?
具体的な統計は限られますが、会計事務所から1年で転職する人は決して少なくありません。特に、「ブラック事務所」に入ってしまった人や、実務経験を積んでからキャリアアップを目指す人が多いです。
転職を繰り返すことは推奨されませんが、初めての転職で1年で辞めることは、致命的なマイナス評価にはなりにくいでしょう。
失敗しない!短期離職でも評価される転職理由の伝え方
短期離職でも転職を成功させるには、面接で「なぜ1年で辞めたのか」という質問に論理的で前向きな理由を明確に答えることが重要です。
例えば、「人間関係が合わなかった」という理由をそのまま伝えるのではなく、「チームワークを重視した環境で、より貢献したいと考えた」と前向きな言葉に言い換えることが有効です。
「教育体制が不十分だった」という場合は、「自律的な成長だけでなく、組織的な支援のもとでスキルを高めたい」といった形で説明すると、意欲が伝わります。
事業会社への転職も視野に入れるべきか?
会計事務所での経験は、一般企業の経理職でも十分に活かすことができます。会計事務所の激務や人間関係に疲れてしまった場合は、ワークライフバランスが整いやすい事業会社への転職も検討する価値があります。
ただし、事業会社によっては転職回数や短期離職を厳しく見る傾向があります。将来的に事業会社への転職も考えている場合は、慎重に行動することが求められます。


人が辞めていく「やばい会計事務所」の特徴



良い会計事務所もたくさんありますが、残念ながら、いわゆる「やばい会計事務所」が存在することも事実です。そのような事務所を選んでしまわないために、その特徴を把握しておくことが重要です。
ブラック会計事務所を見分ける7つのチェックポイント
人がすぐに辞めていくような、いわゆるブラック会計事務所には共通する特徴があります。
- 給料が安い、残業代が出ない
平均的な年収を下回ったり、「自己研鑽」を理由に残業代を支払わなかったりする事務所は要注意です。 - 残業時間・休日出勤が多すぎる
繁忙期だけでなく、常に激務が続いている事務所は、職員が疲弊しきっている可能性が高いです。 - 所長によるパワハラ
所長の権限が強く、大声での叱責や理不尽な指示が横行しているケースがあります。 - まともに教えてもらえない
未経験者を採用しておきながら、教育体制が全く整っていない事務所は人が育たず、すぐに辞めてしまいます。 - 安さを売りにしている
サービスの安さを売りにしている事務所は、そのしわ寄せが職員の給与や待遇にきている可能性があります。 - 雰囲気が悪い
所内に挨拶がなく、常にピリピリとした雰囲気が漂っている事務所は、人間関係が良好でないことが多いです。 - 離職率が高い
離職率を尋ねても明確に答えてくれない、あるいは明らかに若い職員ばかりの事務所は、人が定着していない可能性があります。
「入社後ギャップ」はなぜ起こる?求人票の見方
入社後に「話が違う」と感じる「入社後ギャップ」は、採用段階の情報収集不足が原因で起こります。求人票やホームページの情報だけでは、事務所の雰囲気や実態を把握することは難しいです。
求人票に記載された「給与」「残業時間」「有給消化率」などを鵜呑みにするのではなく、面接時に具体的な質問を重ねたり、転職エージェントを通じて内部情報をヒアリングしたりすることで、ギャップを減らせます。
雰囲気の悪い事務所はどこで判断できる?
職場の雰囲気は、実際に働いてみないとわからないと思われがちですが、面接時の対応からある程度判断できます。
面接官である所長やベテランスタッフが常に無表情だったり、質問に対して高圧的な態度だったりする場合は、注意が必要です。可能であれば、オフィス見学をさせてもらい、実際に働いている人の様子を見るのも良い方法です。
今の事務所は辞めるべき?続けるべき?
もしあなたが上記の「やばい会計事務所」の特徴に複数当てはまる環境にいるのであれば、我慢して働き続ける必要はありません。精神や体調を崩す前に、転職を検討すべきです。
一方で、まだ1年目だからこその悩みで、事務所自体には問題がないと感じるのであれば、「石の上にも3年」という言葉の通り、最低でも2年半から3年は頑張ってみることをお勧めします。1年間働けば、税務の一連の流れを理解でき、次の転職でも「即戦力」として評価されやすくなります。


転職を成功させるための具体的なステップ
「辞める」と決意したら、次は成功に向けた具体的なステップを踏み出しましょう。
どこで探す?会計事務所の求人探しに最適な3つの方法
会計事務所の求人を探すには、主に以下の3つの方法があります。
- 求人情報サイト
多くの求人情報を自分で比較検討できますが、内部情報が少なく、ブラック事務所を見抜くのが難しい場合があります。 - ハローワーク
地元に密着した求人が多いのが特徴ですが、専門的なアドバイスは期待しにくいかもしれません。 - 転職エージェント
会計事務所の内部情報に精通したプロが、あなたの希望に合った求人を紹介してくれます。面接対策や給与交渉もサポートしてくれるため、安心して転職活動を進められます。
特に、会計事務所に特化した転職エージェントは、ブラック事務所の情報を多く持っているため、利用する価値が非常に高いです。
どの時期に転職すべき?会計事務所の繁忙期と閑散期
会計事務所の採用活動が最も活発になるのは、閑散期(4月〜6月、8月〜9月、11月〜12月)です。特に、税理士試験終了後の8月〜9月や、合格発表後の11月〜12月は、未経験者向けの求人も増える傾向にあります。
繁忙期(1月〜3月)は、面接の時間が取れなかったり、入社しても教育の余裕がなかったりするため、避けるのが無難です。
どんな人が向いている?会計事務所が求める人材像
会計事務所では、専門知識はもちろんですが、以下のような人物が特に求められます。
- 勉強熱心な人
税法改正が毎年行われるため、常に新しい知識を学ぶ意欲が必要です。 - 正確さと丁寧さ
クライアントのお金を扱うため、ミスなく正確に作業できることが不可欠です。 - コミュニケーション能力
顧客だけでなく、所内のスタッフとも円滑にコミュニケーションを取れる人が重宝されます。 - 秘密を守れる人
顧客の機密情報を扱うため、守秘義務を厳守できる倫理観が求められます。
転職エージェントはなぜ利用すべき?選び方と活用法
転職エージェントは、あなたの転職活動をトータルでサポートしてくれる心強い味方です。
利用すべき最大の理由は、非公開求人や内部情報を多く持っているためです。ブラック事務所を避け、より質の高い求人に出会うためには、プロの力を借りるのが最も確実な方法と言えるでしょう。
転職エージェントを選ぶ際は、複数のエージェントに登録し、あなたに寄り添ってくれる担当者を見つけましょう。
転職を考えるあなたが知っておくべきこと
最後に、転職を決意したあなたが知っておくべき重要な点をまとめます。
働く前に知っておきたい会計事務所の仕事内容と年収の相場
会計事務所の仕事は、主に記帳代行、決算業務、税務申告などです。
経験年数ごとの年収目安は、フルタイムの場合には、未経験〜1年未満で280万〜350万円、1年以上〜3年未満で350万〜450万円、5年以上〜10年未満で550万〜700万円です。税理士試験の科目合格数や資格の有無によって、年収は大きく変動します。
また、パートや扶養の範囲での募集も最近は増えているので、給与水準よりライフワークバランスを重視した転職先を改めて探すのもよいと思います。



私の事務所では、小さなお子さんがいる主婦メンバーも多く、扶養の範囲で短時間勤務として働いてくれています。
経営者目線としても扶養の範囲内での雇用は、社会保険料の負担が少なく助かる面もあり、いろいろな面で助かっています。
会計事務所を辞めた後の選択肢は?
会計事務所の経験を活かせる転職先は多岐にわたります。経験1年でもきちんと頑張っていれば、多くの職場で、きちんと評価をしてもらえるはずです。
- 他の会計事務所・税理士法人
同じ業界内でより良い環境を求めて転職するケースです。 - 一般企業の経理部
ワークライフバランスを重視する人に適しています。 - 学校法人やNPO法人の経理
安定した環境で働きたい人に人気です。 - FAS(コンサル)
高い専門性を活かしたい人に適しています。
退職時にトラブルにならないための注意点
退職時には、事務所とのトラブルを避けるためにいくつかの注意点があります。
まず、就業規則を確認し、退職の申し出をすべき時期を把握しましょう。一般的には退職の1ヶ月前までに申し出をする必要があります。
次に、辞める意思はできるだけ早く、直接所長に伝えることが重要です。「急に辞める」という行動は、引き継ぎや後任者探しに影響が出るため、避けるべきです。引き継ぎをきちんと行い、最後まで責任感を持って業務を全うする姿勢を見せることが、円満退職につながります。