
私は会計士・税理士として20年以上業務をしており、そのなかで経理担当者から転職相談を受けたり、経営者から経理に対する悩み相談を受けたりしてきました。
また私自身は会計事務所を経営しており、今まで「会計・経理未経験者」を対象に200名以上の面接と20名近く採用もしてきました。その経験を踏まえて経理に関するお悩みに回答していきたいと思います。
今回のお悩みはこちらになります。

未経験ですが、経理転職を目指してます。できればリモートワークがよいのですが、何から実施すればよいでしょうか?
採用活動でわかったこと
私は会計事務所を経営しているなかで、これまで経理・会計未経験者に限定をして採用活動をしてきました。
もともとは小さな事務所で経験者に応募をしてもらえる条件も提示できず、仕方なく未経験者に限定して採用活動を始めた背景がありますが、今となっては未経験者であっても素質ややる気があって、勉強意欲がある応募者の方が、採用後にとても貴重な戦力となってくれていることを実感していて、未経験者を採用して育成するスタイルは逆に私の事務所の強みとなっています。
ちなみに、業務はすべてリモートワークを前提にしているので、事務所は東京にありますが、全国から応募をいただけるようになったこともあり、その点も採用活動においてプラスに働いており、全国の多くの応募者と面接する機会をもらっています。
リモートワークかつ未経験者を対象に求人を出した際に応募をいただける方の特徴をざっくり分類分けすると、以下のような感じです。
- 会計事務所・経理の経験なし、簿記2級は取得、小さなお子様あり(4割)
- 会計事務所・経理の経験なし、簿記2級は取得、お子様なし(2割)
- 会計事務所・経理の経験なし、簿記の資格はなし(2割)
- 会計事務所・経理の経験あり、リモートワークを求めて転職活動(1割)
- その他(1割)
リモートワークを前提にしていることから、やはり小さなお子様がいらっしゃる主婦の方が多い傾向です。
多くの方の履歴書や職務経歴書を見てきて、そのなかで20名以上採用もしてきたので、最近では履歴書や職務経歴書、メールの受け答えで、採用したい人材(=採用後に着実に成長してくれて戦力になってくれる人材)かそうでないかがすぐにわかるようになってきました。
転職活動・求職活動の動機
私が事務所(リモートワーク・経理会計未経験の方を対象に求人)において、実際に多くの方の応募動機を確認したり、面接でお話してみて感じている転職の動機で大きいのは以下の3つです。
- 1位:リモートワークができる仕事を探している
- 2位:出産を機に前職を退職して、小さなお子さんがいるなかでも働きやすい環境
- 3位:事務職で働きたい(これまでは営業や販売職)
小さなお子様がいるなかでお仕事をされるのはやはり大変だと思いますので、そう考えるとリモートワークができるかどうかはとても重要な動機になるのだと思います。
小さなお子様は急な病気とかになる機会も多いですし、保育園から急な呼び出しが入ることも多いです。そのときに在宅勤務だと融通が利きやすいのですので、その点で、業務内容や給与条件と同じくらいに(ときにはそれ以上に)働きやすい環境を提供できるかどうかが重要であることを実感しているところです。
実際に私の事務所は給与等の待遇面は他の事務所に太刀打ちができませんが、それでも優秀な人材が勤務を続けてくれているのは、この「在宅勤務ができること」にあることは間違いありません。
最近ではリモートワークも減少してきている印象なので、ますますリモートワークで働ける環境は貴重になっていく気がします。
経理・会計未経験でもリモートワークで採用したいと思える人材とは?
それでは、採用する側の視点(あくまで私の個人的な視点ですが)として「どのような人材であれば、「未経験」であっても「リモートワーク」であっても、ぜひ採用してみたいと思えるか」について、これまでの採用活動や未経験者の育成を通じて思っていることをお伝えしてみたいと思います。
真面目であること
やはり真面目であることは重要ポイントです。
会計事務所も含め、経理・会計の分野ではやはり真面目さが重要という点もありますが、なぜ私がこのポイントを意識するかというと、リモートワークにおいて真面目であることがとても重要だと考えているからです。
私の事務所では5年以上、完全リモートワークとなっています。リモートワークのメリット・デメリットもいろいろと経験してきました。結果として、デメリットを上回るメリットが大きいので、完全リモートワークが定着していますが、このリモートワークの運用を成り立たせるための重要な要素が「真面目な社員」にあると思っています。
リモートワークは隣にいて業務状況を常にチェックするような形ではないため、やはりお互いの信頼関係が重要だと思っています。そのなかで、信頼してリモートワークを任ようと思うと、やはり「真面目な社員」が必須条件になってきます。
過去に勉強を努力したことが感じられること
経理・会計の分野の業務は細かな単純作業的なものも多いのは事実ですが、一方で、知識を活用して解決していくことも多いです。
特に最近は、会計・経理・税務領域での法改正も頻繁になるので、一度覚えたら終わりではなく、常に時代にあわせて勉強をしていきながら実務に活かしていく必要があります。当然、今の時代はAIとかも活用できる限り活用することも重要ですし、会計経理分野だとまだまだExcel作業も多いので、Excel技術も見逃せません。
また、経理会計分野でもいろいろなITツールが出てきているので、そのようなITツールも勉強しながら使いこなすことも必要になります。
どの仕事も一緒ですが、会計経理分野でも「勉強をし続ける姿勢」は、求められる人材の必須条件になるため、「勉強する姿勢」をもっている人材かどうかはとても重要だと考えています。
その判断の1つとしては、学歴というのも1つの判断基準になるのは事実ですが、学歴で証明できなくても、いろいろと勉強意欲があり、勉強してきたことがわかる情報があれば、採用する側としても、きちんと自己学習しながら働いてもらえるなと感じることができ、採用したい人材になってきます。
参考にはなりますが、経理会計分野に転職を考えている場合には、ぜひ以下のような資格や知識は持っておいてほしいところです。
- 簿記2級
- Excel中級レベル以上
- システム関連の何らかの知識・経験・資格
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謙虚・素直であること
最後にあげたいのは「謙虚さ・素直さ」です。
最初の「真面目である」と少し近い面がありますが、未経験の人材に期待しているのは、やはり採用後の成長幅であったり、成長速度になりますが、その際に必要になってくるのが謙虚であることや素直であることだと思っています。
採用する側としても、できる限り育成制度も充実していかなければと思っていますが、やはり順調に成長していけるかどうかは本人の謙虚さ・素直さにかなり左右されると思っています。
ちなみに、私が未経験者を採用する理由の1つとしては、未経験者の方が新しい環境へチャレンジするということで、この「謙虚さ・素直さ」をもってくれているケースが多いと感じているからです。
そのため、未経験であることは、逆に「謙虚さ・素直さ」をもって新しい職場の環境のやり方に対応してくれる強みを持っていると思っていますので、ぜひ「謙虚さ・素直さ」を武器にしてほしいと思っています。
まとめ

未経験ですが、経理転職を目指してます。できればリモートワークがよいのですが、何から実施すればよいでしょうか?

真面目さ、勉強意欲の姿勢、謙虚さ・素直さを最大限にアピールをして、簿記2級とExcel技術を高めて準備をしましょう。